無知の知ノート

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私は死に方に 夢を持っている

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こんな5月の晴れた日に 

 

まず カミナリの話もなんなのだけど 

ゆうべ ちらっと聞こえた遠雷に 

その季節が近づいていると ワクワクする 

 

私はカミナリが好き  

 

時々 カミナリ音だけを収録したCDを取り出し 

許される限りの大音量に浸る 

 

2時間あまりベランダに立ち尽くし 

雨に打たれて カミナリライブを満喫した夜もあった 

 

運転中 信号待ちしていて 

目の前の送電線に落ちた時は   

 

車内に居れば安全と 知ってはいたものの  

 

地面から突き上げたバイブは 

恐怖に近い 畏敬の念を覚えた   

 

 

カミナリ被害に遭ったことがある人には 

「カミナリが好き」なんて ヒンシュクに違いない 

ごめんなさい 

 

でもやっぱり カミナリが好き 

 

天空を瞬時に走る稲妻の  

絵の具では出せない 光の色 

体に響く 轟き 

 

うっとりとしてしまう 

 

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私のカミナリ愛好歴は長い 

  

記憶を辿れば 小学3年の時 

初めてのお泊りで 

親戚の家へ3日間預けられた夜のこと  

 

同年代の子供がいない退屈さもあって 

ひとり 屋敷を探検してまわっていた 

 

台風が近付いているというので 全ての雨戸が閉じられ 

どの部屋も真っ暗で 不気味だった 

 

その時 雷鳴とともに 隙間から射す光線が 視野に入った 

 

外を見たい!という衝動から 

唯一雨戸のついていない窓を伯父の書斎に見つけ 

鍵を外した 

 

窓を開け 暗闇を見上げてしばらくすると 

走った! 

生き物のような激しい動きで 稲妻が走った 

 

 

庭の木々や 空に浮かぶ雲の形まで ハッキリと確認できるほど 

一瞬にして 暗闇が引き裂かれる感じ 

 

風雨は刻々と勢いを増し 大粒の雨が窓を打ち始め 

稲妻は次々とやって来て 震える感動を与えてくれた 

 

打つ雨にまばたきしながら 

夢中で空を見上げていた 

 

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しばらくして 私の陶酔の時間は 

伯母の悲鳴とともに閉じられてしまった 

 

 

普段は優しい伯母だったが 

彼女が大声をあげたのも 無理はなかった 

 

窓から吹き込んだ雨で 書斎は床までビショビショ 

 

濡れた衣服を引っ剥がすように裸にされて 

頭は バスタオルでぐしゃぐしゃにされた 

 

子供心に プライドを少し傷つけられて 

大きすぎる伯母のブラウスに身を包んだ 

 

それ以来 親戚からも 

「変わった子」「おかしな子」というレッテルを貼られた 

 

 

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自転車で旅に出た時も 

雨だから走らないということは 理由としてなくて 

 

国道を飛ばす大型ダンプが巻き上げる雨水を 

ビッグウェーブのように頭からかぶることは 

何度もあったけど ちっとも苦ではなかったし 

 

むしろ 

顔に痛いほど打ちつける雨の中を走る自分が 

ファンタジーな勇者に思えた  

 

  

北海道の海岸沿いでのこと 

 

さすがに恐怖を感じるほどのカミナリ雲が 

ようやく頭上を通り過ぎて 

その雲の黒い塊が オホーツクの海へ去って行く時 

 

神の姿を見た気がした 

 

大地に潤いを与え 命を吹き込む優しさと 

猛々しく すべてを打ちのめす厳しさ 

 

自然こそが 神ではないのか 

 

  

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死を 恐ろしい事とは思わないけど 

私の死が 誰かの悲しみになることは 絶対避けたい 

 

私が死んでも悲しむ人が居なくなった時 

私は旅に出る 

 

私は死に方に 夢を持っている

  

できれば「楽園」と呼ばれているような 南太平洋の小島 

 

そこで小舟を手に入れて カミナリ雲を待つ 

 

その日が来たら 

両手にしっかりと櫂(カイ)を握り締め 

海へ漕ぎ出そう 

 

そして360度大海原に出たら 

やってくるカミナリ雲に向かって立ち上がる 

通電しやすいように金属を身に付けて 

 

 

私はカミナリに打たれて死にたい 

 

肉体は 深く海へと溶けていき 

魂は 遠く宇宙へ舞い上がる 

 

私にとって これ以上ステキな死に方はない 

 

小舟を漕ぎ出すその日のために 

今しっかりと 筋トレしておこう  

 

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