ひとりぼっちのキミへ
国道から太平洋に突き出した奇妙な岩山を見つけて
ペダルの足を止めた
岩山を歩きたくて 自転車を降りると
そこに 可愛いとはお世辞にも言えない 出っ歯の犬が現れた
茶色い 雑種の中型犬
近くで飼われているのか野良なのか 首輪は無い
自由な生き方をしているらしく
奇岩の山を 案内するかのように
付いて歩いてくれた
太平洋に突き出た場所に腰かけると
犬は 背中を並べて横に座った
もう何日も 人と喋っていない
毎日 ただ黙々とペダルを踏むひとり旅に 少し疲れて
初夏の水平線を見つめた
「ねぇ 名前つけていい?」
出っ歯だから デパ?
ちょっとおしゃれに ディーパ!
正面からの顔は笑いを誘うけど
横顔は
生きる辛さを噛みしめているような
それでも前を向くしかない哀愁を漂わせて
じゃれついて来るわけでもなく
ディーパは ただ寄り添っていてくれた
2時間程の短時間で 友情を感じるのは
変だと思われるかもしれないけど
旅を続けるためには ディーパを残して
この場から立ち去らなければならない事を
少し 辛く感じた
国道脇に停めておいた自転車のところまで
付いて来るディーパに
目と目で別れをテレパシーして 自転車にまたがると
ディーパは岩山の方へ
全速でUターンして走り去ってしまった
・・・なんだ 別れが辛かったのは私だけか
そのクールな野生に感謝して
再び ペダルを踏み 先へ急ぐことにした
右手に太平洋を感じながら 少し走って
振り返った岩山の いちばん高いところに
こちらを見つめて動かない ディーパの姿があった
・・・ありがとう ディーパ
忘れない
キミの その凛とした姿
ひとりぼっちでも
強く 優しく生きている
見習って生きるよ
ご訪問ありがとうございました
感謝☆