無知の知ノート

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父の日に 父の最期の記憶を 

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今夜が峠だと医師から告げられた夜 

父が横たわるベッドの 

足元に置かれた椅子に 私は座っていた 

  

 

深夜2時を過ぎて 

憔悴しきった母を見かねて 

看護師さんにお願いして 別室にベッドを用意していただいた 

 

父と二人きりの病室で 高い天井を じっと見上げてみた  

よく聞く 

体から離脱した魂は 天井に浮かび上がって 見下ろしていると 

 

でも 見上げた天井に 父の気配は感じられなかった 

 

もう 何も喋らない 声を出すことも無い父は 

ベッドの上で 

危なっかしく この世の端っこに横たわっていて  

テレパシーで 会話を試みても 何も聞こえない 

静かすぎる夜だった 

 

 

足が冷たい! と父が感じている気がして 

足元の布団に手を入れて 触ってみた 

 

微かな父の体温 

むこうづねから足首へと さすった  

 

どんどん冷たくなっていく父の足を

明け方まで さすり続けた 

 

 

いろんな場面での父の顔が浮かぶ  

 

少年みたいにイタズラで やんちゃな父 

 

ドライブや旅行が好きで 

いつも いっしょに出掛けたがった父 

  

人の借金を背負っても 人を信じ続けた父 

 

世話好きで 社交的で 

人を喜ばせることが なにより嬉しかった父 

 

 

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朝日が昇るころ 

父の足は 氷のように 

冷たくなった 

  

 

年月が経った今も 手に残る感触が  

父との最後の思い出になってしまった 

 

 

たくさんの苦労があった父の人生の中で 

故郷の 

少年時代を過ごした喜界島が 

最もシアワセな時期だったのだと思う 

 

死んだら 

骨は撒いてほしいと言っていた父は 

いま 

喜界島の海にいる  

  

童心に返って しぶきをあげて泳ぐ 

シアワセそうな父の顔が浮かぶ 

 

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