ダンスが僕らの夢だった(5/5)「背中を押しているから」
(5)「背中を押しているから」
(1)(2)(3)(4)からのつづき
「開けていい?」
封筒の中を覗いて それが何か すぐに理解った
カッコいいデザインだと みんなに褒められていた
ケント愛用のシルバーリング
手のひらに乗せて しばらく見つめてから
それを自分の左手人差指に滑らせた
「預かっておく 次 会う時まで 預かっとくね」
リングをハメた左手で ピースサインしてみせた
「あぁ うん ありがと」
硝子張りの外 下に駐車場が広がっていた
「どこ停めた?」
「あそこ ほらっ向こうから5列目の端っこ」
「ここから見てるよ 運転気をつけてな」
「ハグする?」
「おぅ」
踊った後 みんなでよくやっていた お疲れ~。のハグ
まわした両手で相手の背中を軽くポンポンと叩く
私の背中をポンポンとしてから
ケントはギューと腕に力を入れた
「じゃぁ またね」 と精一杯微笑んでから
階段を イッキに駐車場まで駆け下りた
再び会ってこんな風に話し合うことが もうないかもしれない不安が
車の所まで走らせた
運転席のドアを開け 4階を見上げるとケントが手を振っていた
、、、サヨナラなんかじゃないっ!
首を大きく左右に振って
指輪を見せるように 強く握った左手を高く挙げた
ケントは振っていた右手をゆっくりと降ろし
私の手に合わせるように 左拳を高く挙げた
夕焼け空が 窓硝子全体に映って
ケントの体が オレンジ色の雲の上に
まるで浮かんでいるように見えた
・・・泣いちゃダメだ
なんとか笑顔で 運転席に乗り込んだ
伝え忘れた言葉が 胸を締め付けていた
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帰りの高速道
溢れる涙を拭うことなくハンドルを握っていた
近畿圏に近付いて ラジオのノイズがFM802に変わる頃
涙は枯れてしまって
往復約600kmの走行で 肩は岩石のように重くなっていた
・・・踊ってたら 肩凝りなんてないのにね
話しかけるように ポツンと
意味のない独り言に 笑った
高速出口を降りる時
深夜のFMから 気持ちのいいR&Bのメロディーが流れた
ボリュームを上げ 頭の中を振り付けで一杯にした
、、、5、6、7、8、
右手を体側に沿って大きく回したら 右足を前へ
次に左足を踏み込んで 両手を水平に切って
足をジャンプクロス ターンして 後ろへ2歩
キックアップした右足を横へ
上体を左右に揺らしてからロールアップしたら
右足後ろクロスで 左へワンツー
ニースライド~右手床~ヒップアップしてウェーブアップ
前へ 右足~左足タッチ~ポーズ
後ろ向き4カウント歩き~ジャンプアップターン
左拳を高く挙げる! 、、、1,2,3,4、
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祈れば何でも叶うなんて
そう簡単に言えはしないって わかってる
でも信じたいんだ
夢見た日々は 輝いていた
だから 信じているんだ
これから何が起きようと
キミは前を見て歩く
きっとまた 夢を見つけて歩いていく
さぁ 笑顔しよ
あの日の僕らが キミの背中を押しているから
ご訪問ありがとうございました
感謝☆