言い訳しようのない状況にハトが空から落ちて来た

記憶の中に未解決のまま

個人的“ 謎の事件ファイル ”が　幾つかある　

そのひとつが　ハトが空から落ちて来た事件　

５０ccバイクで家を出て数百m走ったところで　

バサッ！と　

右肩すれすれに　空からハトが落ちて来た　

咄嗟にブレーキを握りしめ　すぐに空を見上げたが　

ハトを襲ったのかもしれないトンビとかタカとか　

そんな姿は一切無く　ただ澄み渡る青空　　

近くに山はあるけれど　

トンビやタカの姿は　最近見ない　

バイクを道路脇に止めて　

アスファルトに横たわるハトを覗き込んだ　

目は閉じて　すでに死んでいる様子だが　

もし触って「痛い！痛い！」って

暴れられたら　恐いなと思い　

しばらく　

しゃがみ込んだまま　触れずに見つめた　

でも

このまま車道に居ては　轢かれてしまう　　

とりあえず　ここから移動させたい　

鳥インフルエンザ・オーム病　　

触ってはいけない！と　

頭の中では叫びながらも　考えた　　

いつも行動に起こす判断基準のひとつは　　

自分がその立場だったら　どうなんだ！ってところ　

この場合　私がこのハトだったら　

死んだら　魂と　器だった体は　別物だからといっても　　

グシャグシャと潰れていくのは　見苦しい　　　

通りかかる車の人に　

轢いてしまって気分悪くさせるのも嫌だし

ハトを手のひらに乗せた　

まだ温もりのあるその体は　

大きさの割には軽かった　

・・・どうしよう　やっぱり死んでいる　どうしたんだろう　

訳が分らないまま　両手のひらにハトを乗せて　

途方に暮れた　

ぞろぞろと人の集団が近付いて来る　

表通りにバスが着いたらしい　

・・・マズイよ　このシチュエーション　　

 まるで私がバイクで轢き殺したみたいだ　

予想通り　

みんなイブカシイ表情で覗き込んで　通り過ぎてゆく　

・・・ひとりでも誰か　事情を聞いてくれー　

大声で説明するのも　オカシイし　

誰も聞いてくれそうにもなくて　　　

私はまるで　さらされる無実の罪人だった　

とりあえず　街路樹の下にハトを置いて　

スコップを取りに　家へ戻った　

結局　ハトの死骸は

水路沿いの並木の下に行って　埋めた　

以前にも　落ちて死んでいた山鳥を埋めた近くだ　　

ここなら造成で掘り起こされることもないだろう　

帰宅後　

何度も手を洗って　うがいして　

スコップや　バイクのハンドルや　

触ったところは　除菌で拭いた 　

実は　プチ清潔症候群なんだ　

それにしても　

何故　ハトが空から落ちて来た？　

怪我はなさそう　血も出ていない　　

脳卒中？　心筋梗塞？　そんなの聞いた事ある？　

そういえば　台風とか　暴風雨の時

鳥たちって　何処でどうやって　耐えているのかなぁ　

街で鳥の死骸って　あまり見ないし　

鳥に限らず　野生って　

なんか秘密の　

カッコイイ死に方を　

知っていそうだ　

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