無知の知ノート

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カッコいい幽霊との一泊 

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半年間の自転車ひとり旅で  

怖い!と感じたコトの TOP5に入る 

 

知床半島 羅臼(ラウス)の宿でのこと 

 

通されたのは2階の 10畳ほどの畳部屋 

わー気持ちいいー 

部屋に入ってすぐ 窓に駆け寄った 

 

緑がいっぱい目に飛び込んできて 

吹き込む風も 緑の匂いがした 

 

ふと振り返ると 部屋の入口近い場所の角に 

ポツンと黒いリュック (こんな感じ↓ハイ絵ヘタ) 

 

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・・・あっ同室者がいるんだぁ 仕方ない 安宿だし 

 

すんなりと受け入れたものの 

気になる同室者は 一向に姿を見せない 

 

1時間以上過ぎても現れない 

 

素泊まりなので

コンビニで買って来ていた おにぎりを食べていたら  

出たっ! あっ違う 現れた 

 

着物姿の いや 浴衣姿の?  

ちょっと文章では 表現仕切れない

 

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 両腕両足 顔面まで 無数の細かい切り傷だらけの女性 

すり足で部屋に入って来た 

 

不気味過ぎて 年齢わからないけど 30~40歳? 

 

私の方をチラッを見たけど 見ないで!オーラ漂わせて  

部屋の隅にうずくまった 

 

一瞬合った目は 半目で 生きる気力を無くしたよう   

 

・・・幽霊!? 

 

私はおにぎりを口に入れたまま しばらく飲み込めずにいた 

 

んぐっ!と ようやく飲み込んでからも  

女性から目を離すことが出来ず  

気合いで おにぎりを食べ続けた 

 

あまり見続けるのも 失礼かとは思いつつ 

チラッチラと目を向けると 

黒いリュックを触ったりしている彼女の動作に 覇気が無い 

やはり 幽霊なのか 

部屋の対角線に幽霊と私 (こんな感じ↓)

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沈黙に耐えきれず 

残り1個のおにぎりを勧めてみたけど 返事は無く 

 

奇妙な空気の中 時間は流れた  

 

 

 

突然!立ち上がった幽霊は 部屋を出て行った 

 

・・・お風呂かなぁ 私もっ

 

後を追ったけど 

1階の風呂場には 誰もいなかった 

 

さっぱりと入浴を済ませて部屋に戻ると 

部屋の隅 さっきと同じ場所に 

幽霊はごろんと 横になっていた 

 

・・・今夜は幽霊と寝るのかぁ

 

覚悟を決めた ってか 眠気に負けて眠りについた 

 

 

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翌朝 

 

翌朝っ!って 眠れたのかよぉ

(って思った方もいるでしょう)

 

あの頃の私 自転車旅 疲れていたんだなぁ(遠い目) 

 

 

「おはようございます」って 幽霊に言ったら 

「おはようございます」って 初めて声を聞かせてくれた 

 

 

そこから 

幽霊の いや 彼女の 身の上話  

 

「ビックリしたでしょ 気味悪いでしょ ごめんなさいね

 コレ この傷 熊笹(クマザサ) 私 死にかけたの」

 

両腕両足 顔面の 無数の細かい切り傷は

熊笹の葉で切れたらしい 

 

言われてシッカリと見ると 

切り傷は どれもミミズ腫れになっていて 

腕にも足にも 打ち身の青アザだらけ 

痛々しかった 

 

ひとりで知床連山のトレッキング中 道に迷い 

1週間 山中をさまよったそうな 

熊との遭遇を恐れて ほぼ眠らずに 歩き続けたと 

 

 

幽霊じゃなかった 

ひとり山中を歩いた 強い女性だ 

 

しばらく宿に滞在して 体を休めると言う 

 

身の上話 最初にしてほしかったな  

怖かったんだからぁ

私の次に来る同室者には 先に話してあげてくださいね 

 

それを言える雰囲気までは なれなかった 

 

出発の荷造りをする間も 部屋を出る時までも 

彼女はまた口を閉ざして コチラに見向きもしなくなった 

 

きっと精神的にも キツイ体験だったに違いない 

 

カッコいいですよ 生還したのだから

 

声を掛けたかったけど 言えないまま宿を出た 

  

カッコいい 幽霊のような女性との一泊は 

旅の思い出として しっかりと胸に残った 

 

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ご訪問ありがとうございました 

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